三つほど扉を開けてがっかりした後、四つ目の扉が少し開いているのに気づいた。
中をのぞいてみると、壁に寄りかかるようにして座り込んでいるウィルが居た。駆け寄ろうとして、ウィルが口元に寄せている腕が目に付いた。
腕から、ぽたぽたと血が滴り落ちているーー自分で、腕を噛んでいるんだ……。
「ウィル……」
そっと声を掛けると、びくりと肩を震わせて、焦点の合わない赤い目をそろそろとこちらに向けた。腕から離した口元は赤く染まっていて、鋭い牙がのぞいている。
「ミカ、さん……?」
名前を呼んで、初めてあたしの存在に気づいたように、さっと腕を背中に隠して、ばつが悪そうに顔も背けてしまう。
「腕……痛くないの?」
「……慣れてますから。傷も、すぐ治りますし」
「慣れてるって……、よく、噛んでるの?」
そう訊くと、『しまった』という顔をする。
「だめ、ですね……。頭が回ってないみたいです」
自嘲めいた笑みを浮かべて、自分の腕に目を落とす。飢えに堪えかねたのか、腕に残った血の跡も舐めとった。
ーー傷は、治ってるみたい。