一方は、新聞業界最大手「ヘルメス・ジャーナル」紙だ。


『HEX社製「シャングリラ」大躍進!

2080年度のAV機器部門堂々の売上第1位!』


大々的に、新型MOBを持ち上げる内容の記事だ。


もう一方は……。


いわゆる「タブロイド紙」の一つ、「オピニオン」だった。


『「悪魔の箱」による死者、先月、全世界で既に10人を越す

HEX社、ひいてはハヤカワ・グループの責任を問う声は最早もみ消されるのみなのか?!』


こちらはマイナー紙だけあって、「ヘルメス」とは全く真逆の内容だ。








「この二つの記事………、どっちもMOBの事書いてあるのに、内容は全っ然、違うじゃない?」


アスカが両方を読み終えた頃を見計らって、謎の女性が再び声をかけてきた。


「………そう……ですね。」


別に驚くほどの事でも無いだろう。この時代の大手新聞社は全て三大巨大企業「トリオ」の傘下にあり、いわば只の宣伝媒体としてのみ、その存続が容認されているようなものだ。