……アスカが風紀委員に呼ばれてから、20分後。
彼女は、この学園の本館の、最上階へと向かっていた。
エレベーターが音もなく昇っていく間、アスカは、先ほどの職員室でのやりとりを思い出していた。
担任の桐野(きりの)は、顔中に緊張をみなぎらせて一言、
「理事長がお呼びだ。すぐに行きなさい。」
……と、それだけを告げたのだった。
今日の居眠りを咎められるものだとばかり思っていたアスカは、桐野のその言葉で、事態が最も悪い方向へと進んでいる事を知った。
(……………退学、かぁ………。)
昨日の事は相変わらずはっきりとは思い出せないが、自分がとてつもなく愚かな行為に付き合わされていたという事だけは、頭のすみに残っている。
エレベーターの階数表示が上がっていく。アスカはそれを目で追いかけながら、特に意味も無く壁でリズムを刻んでいた指を、ぐっと握り締めた。
(悩んでたって………しょうがないよね………っ!)
彼女のその覚悟を見計らったかのようにエレベーターは停止し、木目調の扉が静かに開いた。
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