入学式を終え、教室でしばらく待機中・・・。
「はーなーこー!!」
声が聞こえたのと同時に背中にすごい衝撃が走る。
「・・・・・つ、、乙姫ちゃん。」
この子は私と同じ中学校出身・・・・・というか、幼馴染ってところかな?
幼馴染の三島乙姫(みしまつばき)。
名前が同じ”つばき”だから小さいころからみんなから注目されてたよな・・・・。
「・・・・つ、乙姫ちゃんも、1組だったっけ?」
「うん。そうだけど。
なんか華子に入試で負けた気しなかったのに!
はあ、私、ああやって全校生徒に注目されたかったな。」
「き、緊張、してたんだけどね・・・・・噛まずに言えてよかった。」
ホッと息を吐くと、
乙姫ちゃんは、目を細めた。
「なんか、華子の話し方ってなんか面白いよね・・・。」
「へ?」
私は乙姫ちゃんのいきなりの発言に戸惑ってしまう。
「なんかさ、もうちょっと自信持っていいのに。
新入生挨拶もあんなにハキハキと言えるほどだし、頭もいいんだから!
それに、華子、モテそうだしね。」
何何何何?!?!?!?!?!?!?
そんなこと初めて言われたし!!!
「そんなことないってば・・・・・!」
「私はそうだと思うんだけど・・・・・・まあ、しばらくしたらわかるってとこかな?」
フフっと微笑んでる乙姫ちゃんの方が可愛いと思うけど・・・・・。
ガラッと担任の先生が入ってきて、HRが始まる。
「ええーっと、まずは自己紹介をしてもらおうと思う。
じゃあ、そっちから。」
出席番号の1番から自己紹介していくようだ。
はあ、ドキドキしてきた。
ちゃんと噛まずに自己紹介できるかな・・・・・??
「椿華子です。よろしくお願いします。」
パチパチと拍手され、自己紹介はさっさと次の人にまわる。
ガタッと後ろの人がイスから立ち上がる音がした。
「・・・・椿悠介です。」
・・・・椿??
この教室に、”つばき”が3人もいた・・・・。
このうしろの人も椿くんっていうんだ。
どういう子なんだろう・・・。
ちらっと後ろを向いてみた。
「・・・・・!!」
なんで?!
タイミングの問題なのかな??
バッチリ目があった。
「ど、どうも。」
向こうもビックリしたらしくぎこちない挨拶をしてくれた。
「苗字・・・・同じだね。」
「あ、うん。そうだね。悠介くんだったけ?」
私は無意識に彼の瞳に吸い込まれそうになった。
HRも終わり、各自、自由解散になった。
「椿さん。」
「あっ、何?椿君。」
スポーツバックを持って、帰る準備を終えた椿君がいた。
「あの・・・・椿さんさ、サッカー、興味ない??」
「サッカー・・・・・」
無意識のうちに椿君の言葉を繰り返し唱えていた。
「ははは。サッカーか・・・・、うーん。どうだろう。」
サッカーって聞いていいイメージわかないんだよね。
なんか怖いし。よく怪我するシーンをテレビとかでよく見るし・・・。
「あの・・・・まあ、とりあえず来てほしいんだよね。」
「えっ・・・・?!あっ!ちょっと!!」
椿君は私の手を取って教室をあとにした。
連れてこられたのは、グラウンド。
そこにはサッカーのコートが2面あった。
もう早速練習を始めている。
私がボーっと眺めていると、椿君がグイっと手を引っ張った。
「椿さん。こっち。」
「・・・つ、椿君!?」
なんだか、何も言われずにつれてこらえるとなんだか怖くなってくる。
「待ってて。」
連れてこられたのは・・・
「体育倉庫・・・??」
中にはサッカーボールの他にも体育で使うようなハードルや石灰、コーンなどが置いてあった。
「体育倉庫、兼、サッカー部室かな?」
確かに、サッカーボールの他にもスパイクやスパイク入れ、すね当てなどが無造作に置かれている。
あと、汗臭い
「椿君。・・・・・って、////」
椿君は私に背を向けてネクタイとシャツを脱ぎ始めた。
「ちょ・・・・・ちょっと、つ・・・椿君!」
「ごめん!着替えるから、待ってて。」
・・・・・もう、何するのよ!!
なんか、すごくドキドキしてるんだけど。
椿君の服のこすれる音がなんだかもどかしいというか、なんだか・・・・・。
「ごめん。行こうか。」
「は、はい。」
椿君は、さっきグラウンドで練習していた部員たちと同じ練習着を着ていた。
ここで、私にある疑問が浮かんだ。
なんで、椿君は新入生なのに練習着持っていたり、初日から練習に参加してるの??
連れてこられたところはさっきと同じグラウンド。
「おーい!!悠介。」
誰かがコートの中から駆け寄ってくる。
「ちわっす。駿河(するが)さん。」
「久しぶりだな。悠介。
・・・・で、この子が?」
「ええ。恐らく。名前が同じだから間違いないと思います。」
駿河さんと呼ばれた人は私を舐めるようにつま先から顔をじーっと眺める。
「俺、入学式寝てたからわかんねーけど、
君が椿華子ちゃん??」
えっ・・・・・?
「え・・・っと、そ、そうですけど・・・・。」
寝ていたのに私の名前を知っていたことに驚いてしまった。
「俺、サッカー部のキャプテンの駿河亮汰(するがりょうた)。
君をスカウトしようと思ったんだけど・・・。」
す、スカウト?????
★乙姫side★
「はーなーこ!」
HRが終わり、一緒に部活見学しようと誘おうとしたが、
教室中見渡しても見当たらない。
「ねえ、椿華子って子どこに行ったか知らない??」
華子の席の近くの男の子に聞いてみた。
「ああ、悠介とどっか行ってた。サッカーコートにでもいくんじゃない?」
・・・・・・サッカーコート??
「やばい!」
私は華子を探しに教室をあとにした。
華子にとってサッカーはタブーなのに・・・・・!!