いつの間にか目の前の狼はいなくなって、代わりに……。




「お嬢さん、これやで怖くないやろか?」






男の人があたしを見下ろしながら立っていた。



「は、」




すらっと高い身長。綺麗でサラッサラの茶色い髪。真っ直ぐにあたしを見据える少し垂れた目。訛りの強い喋り方。







それから。




「み、耳……耳がっ!」



本来あるべき位置に耳はなく、そのもっと上、頭のてっぺんの両わきにもふもふの獣耳が生えてる。




時々ピクッと動くそれは、明らかに人間じゃないことを示していた。







「うん、やって僕、狼やからね」



「え……!?」





狼って、今の今までここにいた狼!!?



「あの姿のまんまや怖がらせちゃうから、人間っぽくなってみました」



えへ、と可愛く笑う彼。何なんだ一体……。