見なかった方が知らなかった方が、幸せだったかなぁ。
現実味を味あわされた感じ。
あたしは中庭からとぼとぼと、不安オーラを出しながら教室に戻る。
すれ違う生徒らは、噂の有名人やらを見てお!っていう反応を見せる。
女子はきゃー!あの人!って。
有名人がこんなにも負のオーラ持って、歩いてること知らないだろお前ら。
有名人だってね、不安を持つんだよ。とすれ違う生徒の反応を見て思う。
別の意味で有名人は辛いわ。


「あれ?海東おらへん」


教室に戻るなり、同クラの坂本が話しかけてきた。


「うん。まだ中庭じゃない」

「ん〜喧嘩か?」

「なわけないでしょ。どいて」

「なんや今日はえらい冷たいな〜」


坂本は残念そうにして、渋々通路からどく。
あたしは自分の席に座り、弁当箱をしまう代わりに勉強道具を取り出す。
次の授業までまだ時間がある。
休み時間だから、教室が賑やか過ぎて五月蝿いのは仕方ない。
出来立てホヤホヤカップルが、教室でいちゃついてる光景が視界に入るのは仕方ない。
あたしはノートと教科書を開き、白紙のページにシャーペンを走らせた。