「…あたしさ、記憶ないんだよね」
「は?」
口に出した瞬間ヤベッと思ったが、まぁいいか。と思い話を続けた。
この近くで事故に遭ったこと。
その後遺症で事故前の記憶がないこと。
例の男の子のこと。
手紙のこと。
全部話した。
不良くんは一切笑わずに、顔色一つ変えずにあたしの話を最後まで聞いてくれた。
そんな話をしたら30分以上経ってしまって。
アイスコーヒーに入っていた氷は全て、溶けてなくなっていた。
「…男の子のこと、思い出せなくて。多分だけどね、その子が…星形のネックレスくれたんじゃないかって、母さんも言ってたんだ」
「……星形のネックレス……」
「どうかした?」
「その男の子の名前、わかんねーの?」
「あ〜…確か廉って書いてあった」
不良くんは一瞬驚いた顔をした。
何が突き刺さったみたいな。