「なにしてんの」
そう話しかけると、女の子は恐る恐る俺の事を見上げた。
帽子の中から大きなくりくりの目が俺を見る。
一瞬ドキッときたのを覚えてる。
でも整ってる顔にヘアピンぐらいの傷跡があったのも覚えてる。
「…お母さんに邪魔だから出てけって言われたの」
「なんで?なんでそんなこと言われたの?」
俺はなんとなく、共感というか、同情というか、俺と感じてることが同じなのかもしれないと思った。
詳しく聞きたかった俺は、女の子の隣に座って話を聞いた。
「弟が生まれたけど、育てるの忙しくて、お仕事も忙しくて」
「だから家にいちゃダメって言われたの?その傷もお母さんがやったの?」
女の子は頷いた。
俺の場合は母さん達が家にいないのが当たり前だから別に何にも思わない。
期待したところで、仕事で潰されるってわかってるから。
だけどこの女の子は、母親に期待してる。
期待してるから怪我してまでも、縋ろうとするんだろうな。