廉side
あの日の夏、たまたま家の近所にある海岸に行った。
両親は共働きでほとんど夜帰り。
幼い俺はいつも学童に通っていたが、その一時期は学童に行ってなかった。
多分行きたくなかったんだと思う。
世間のどの学校も夏休み。
普通の家庭なら実家に帰ったり、旅行行ったりとかするだろう。
だけど、俺の家は仕事が1番。
最優先事項。
だから、旅行なんて行った覚えもないし、実家にも帰ったことがない。
ばーちゃん達が逆に来るって感じで。
そんな夏に気分で海岸に行ったら、俺と同じくらいの年の子がいたんだ。
麦藁帽子を被って、青のチェック柄のワンピースを着た女の子。
1人で砂浜に座って、ぼーっと海を見つめていた。
幼い頃の俺は積極的に人と接する子供だったらしく、なんの躊躇いなく女の子に話しかけた。