「夢を諦めたくない。母さんと約束したし、それに1つだけ追いかけた方が、転々と探すよりはましだと思う。あたしもスムーズに行くように頑張る。みんなに恩返し出来るように頑張るから!だから…郁にはもう少し我慢してほしい…」

「…士はさ、いつも俺の相手してくれてんじゃん。疲れてるときも、辛いときも。いつも笑ってさ」


郁は立ち上がり、あたしの隣にある椅子に座る。
そしてあたしの頭に手を置いて、いきなり髪の毛をくちゃと撫でた。
悲しそうな顔をしていた郁は、次第にいつもの笑顔に戻り、ニカッと太陽のように笑顔を見せた。


「俺は士応援してるから!だから、俺のこと気にすんな!冷たくされても、嫌いになんないから。だからさ、頑張ってよ…姉ちゃん…」


ぎゅっと抱き締められる。
姉ちゃんと言ったときの声が、なんとなく震えていたのに気付いた。
あたしはありがとねと言うと、そっと抱きしめ返した。
たった1人の弟。
あたしは大切する。
たった1人の家族。
あたしは絶対大事にするから。
もう少しだけ、あたしの我が儘聞いてね…?郁。