「士遅いんだよ〜…寂しかったわ…」
「ゴメン、学校で勉強しててメールしなかったんだ」
さり気なく抱き付く弟。
しかも俺をチラッと見て、挑発するようにニヤリと笑う。
ピクッと俺の頬の筋肉が動いた。
それに気付いた士は、弟を引き剥がす。
「あんた高校生でしょ」
「…!士、冷たい…」
引き剥がされると、弟はまた犬みたいにしゅん…となる。
そんな弟を構わず、帰ろと俺の手と弟の手を引っ張った。
「お前高校生のくせに、シスコンかよ」
「は?俺の家族は士だけなんだよ。あんたに何がわかる」
「郁、廉だって家族がいないに等しんだよ」
「え…ごめん、なさい…」
「…べつに。俺は士さえいればいい」
「はぁ!?士と恋人同士なの!?」
引っ張られながら歩いていた郁の足がその場に止まり、俺と士を指で指して唖然する弟。
士は呆れた顔をし、前に言ったよ?とめんどくさそうに言う。
「廉は大事な人なの。廉と一緒にいると勇気を持てるんだ」
「士…は俺だけの士じゃなかったの!?」
「ガキかお前」
えぇー!と叫ぶ弟に士は一発叩き、そのまま引っ張って帰る。
俺はそんな光景を見ていると、なぜか凄く和んでいた。
自分に兄弟がいたら、こんな感じなのかなって思いながら。