「…あたしさ、憧れなんだよね。両親がいてみんなで食卓を囲めるって」

「…士」

「実際には無理だけどね。郁しかいないし。最近あたし遅いし、郁先食べて寝ちゃうし。朝もちゃんと食べないし郁」


温かい眼差しで見ていた士は、下に目を落とし俯いた。
俺は近づき、頭を撫でる。


「ちゃんと郁の面倒見れなくて郁を不安にさせてる」

「そのせいで、お前も勉強が疎かになっていたってことだろ」


「…そんなとこ」


俺は士を抱き締めた。
泣いてる子供をあやすように、頭を撫でながら。