真っ暗な家路。
道端の電灯が俺達2人を照らし、住宅地からは明るい光が見えていた。
隣で士は時計を何度も何度も気にする。


「そんなに急いでんのか?」

「え…あ、うん…メールしてないから」


あっそと素っ気なく言い、俺は歩く足を早めた。
士は俺が歩き出した瞬間、あ…と声を漏らした。
俺は振り向き、士の目線がある方に目を向けた。
目に映ったのは、一軒家の家族が楽しくテーブルを囲んで夕飯を食べている風景。


「…士」


士は幼い頃に両親を亡くしている。
あの目に映る家庭とは違う。
両親がいて…そんなことない。
一緒に食べることすらない。
幼い頃から今の自宅に叔母や叔父が来て、一緒に食べるってだけ。
士が小学6年ぐらいになると、弟と2人で食べるようになったとか、言っていたはず。