「……由梨、ここだよ。」


先に口を開いたのはおにぃちゃんだった。

おにぃちゃんの家の前まで着き、ようやく安堵する。

「ここが……おにぃちゃんの家?」


そこは、小さなアパートだった。

「うん。…ボロくてごめんな。」

そう言って、おにぃちゃんは、家の鍵を開けて中に入る。

おにぃちゃんは、大学生。

だから、そんなにお金の余裕がない。

だからそれは…仕方のないことだ。