ーーやだ。建志…怒っちゃった?


春乃は閉ざされたシャワールームの扉を
じっと見つめていた。


「・・ど・・・どうしよう。」


怒らせてしまった・・・。



微かな香水の匂いに、
どうしようも無いくらい胸がもやもやして、
電話のあの鼻につく女性の声を思い出して吐き気がする。


だから、思わず建志を突き飛ばしてしまった。


はぁ・・・

もう少し、大人な女性にならなくちゃ。


春乃は重い体を起こして、
自分の部屋のクローゼットへと向かう。
気は重いけど、
できるだけ、明るく建志に行ってらっしゃいしよう。

そう思って
明るめのグリーンのワンピースを手に取る。

これはパパからのプレゼントだ。
お嫁に行くから少し落ち着いたデザインのワンピースをと言って
持たせてくれた。

袖を通すと、なんだか無性に両親に会いたくなった。


軽く身支度を整えると、
ベッドールームへ戻る。


建志もちょうど身支度を整えて
ネクタイを締めたところだった。

「あのっ。建志ーー」

コンコン。