建志は驚いたように、目を見開いて

「ごめんね。
 やっぱり・・・遅くなったこと怒ってる?」


「あ。ち・・・違います。」

やだ。私ったら・・・


「そうなの?僕は、大丈夫だから遅くなっていいって言われて、
 とても寂しかったけど?」

「え?--そんな風には・・・」

春乃は振り返って建志を見上げた。
建志はちょっと気まずそうに目をそらしながら、

「だって、『さみしい』って…ちょっとかっこ悪いだろ?
 できれば、春乃の前では余裕のある大人の男でいたいから・・・

 だから、春乃に寂しがってもらえたら
 帰る口実ができたのになぁって・・・・」

ちょっと恥ずかしそうにはにかんだ建志は
ゆっくりと春乃の頭を撫でた。


「---あのっ。私も・・・寂しかったんです。
 でも、寂しいって言ったら
 建志さんに迷惑がかかるかなとか・・・あの…

 
 でも、皆さんに寂しくないように
 賑やかな夕食にしていただいてーーー」

ーー建志もさみしかったんだ。うれしい…





春乃は顔を赤くしながら
言い訳にも似た説明を一生懸命する。

それを建志は、春乃の髪に指を通しながらにこやかに見守る。

「春乃も同じ気持ちだったんだね?
 うれしいよ。よかったぁ。僕だけ春乃に会いたいのかと思った・・」

建志はゆっくり春乃の手を取って
ゆっくり引き寄せる。