午後の授業は現代文と物理。
 由希はまた窓の外を眺め続けていたが、どちらの教師もただ説明するばかりで生徒の方を見ないため、数学の時のようなことはなかった。
 物理の途中でいきなり小テストを手渡されて慌てても、それはごく簡単に解くことができた。
 この頭は便利だけれど、きっと人間としてはあまり良くはないのだろうと由希は少しだけ考え、本当に少しだけでやめた。

 放課後、多くの生徒は部活に出ていく。
 ソフトボール部の可穂と美術部の舞に別れの挨拶をしながら、無所属の由希は帰り支度をする。

「まったくもったいないなー。うちの部に来れば大活躍なのにー」
「だから疲れるから嫌なんだってば」
「ババくさいなあもう」

 嫌というほど聞いた可穂の勧誘に、いつものように由希が答えれば、舞もいつものように笑って。
 それがとても幸せなことに思えて、由希は笑みを湛えたまま教室を後にする。

 学校はとても好き。
 この楽しい時間を、少しでも長く味わっていたい。
 それでも、帰らなければいけなくなる。
 由希は、玄関を出たところで足を止めて、溜め息を吐いた。