由希、可穂、舞は、毎日そうするようにひとつの机を三人で囲んで、それぞれ弁当を広げた。

「うきはほんほにいっふも」
「口の中のものを飲み込みなさい」

 玉子焼きを口いっぱいに詰め、まるで言葉を発せていない可穂を舞が指摘する。
可穂は少しの間もぐもぐと玉子焼きを噛みしめて、最後は水筒の水に任せてそれを飲み込んだ。

「由希はほんとにいっつも外を見てるよねー」
「うん、確かに」

 可穂の言葉に、舞が相槌を打つ。

「あはは……まあね」

 由希が気まずそうに笑うと、舞は面白そうに言う。

「川村由希、大人びた雰囲気と見せかけて実は愛嬌があり、勉強も運動も料理もできてなかなか男子に人気……」
「ま、舞!」
「ただひとつの欠点が、授業を聞かないこと」
「まーいー!」

 由希と舞のやり取りに、可穂がけらけらと笑う。

「本当、他はみんな完璧なのにね」
「可穂まで……」

 由希は嬉しいような悲しいような気分になりながら、コロッケを口に運んだ。