初夏。五月晴れの日。
少し都会と言える街の中心に建つ、三階建ての高校の二階。二年二組の教室の窓際、一番前の席。
黒く癖のないセミロングの髪に、フレームレスの眼鏡が特徴の少女は、頬杖をついて退屈そうに窓の外を見ていた。
青いペンキで塗ってから、白いペンキを撒いたような。
そんな空と雲のコントラストをただぼんやりと眺めていた。
少女が感じている世界は静かで、ノートにペンが走る音と、黒板とチョークがぶつかる音、そして、小さな呪文のような声に支配されていた――。
「……村、川村由希!」
突然、小さな呪文の声が大きくなり、ぼんやりとしていた少女――由希の名前を呼んだ。
由希はびくっと身を強張らせて、視線を窓から教室の前方に向けた。
「は、はい! 何でしょう!」
慌てた声は大きく響いて、それと同時に笑いが起こる。由希は、当てもなく開いた教科書で顔を隠した。
由希を呼んだ初老の男性教師は、溜め息を吐いて、由希に問いを投げかける。
「五十二ページの問二、答えてみろ」
由希は焦ったようにページを繰って目的の問題を見つけると、十数秒の間を置いて答えた。
「……六、です」
少し都会と言える街の中心に建つ、三階建ての高校の二階。二年二組の教室の窓際、一番前の席。
黒く癖のないセミロングの髪に、フレームレスの眼鏡が特徴の少女は、頬杖をついて退屈そうに窓の外を見ていた。
青いペンキで塗ってから、白いペンキを撒いたような。
そんな空と雲のコントラストをただぼんやりと眺めていた。
少女が感じている世界は静かで、ノートにペンが走る音と、黒板とチョークがぶつかる音、そして、小さな呪文のような声に支配されていた――。
「……村、川村由希!」
突然、小さな呪文の声が大きくなり、ぼんやりとしていた少女――由希の名前を呼んだ。
由希はびくっと身を強張らせて、視線を窓から教室の前方に向けた。
「は、はい! 何でしょう!」
慌てた声は大きく響いて、それと同時に笑いが起こる。由希は、当てもなく開いた教科書で顔を隠した。
由希を呼んだ初老の男性教師は、溜め息を吐いて、由希に問いを投げかける。
「五十二ページの問二、答えてみろ」
由希は焦ったようにページを繰って目的の問題を見つけると、十数秒の間を置いて答えた。
「……六、です」