-Taiga side-
……おかしい。
“完全に”おかしい!
サングラスに、付け髭に、ハットに、穴を2つあけた新聞紙。
万全装備を施した俺は今、数メートル先を歩く男女を、建物の陰から暫し観察しているのだが――。
どこか初々しい後ろ姿。
2人の間にある、何ともいえない空気。
……非常事態だ。
これは一体、どういうことか。
混乱状態に陥った俺は、無意識に手元の新聞紙を握りしめる。
神様、何で……。
何で俺の可愛い妹が、またあのクソガキと2人っきりで歩いてんだよーー!?
俺は堪らず、心の中で絶叫した。
……ところで、何で俺がこんなことをしているのかというと……。
それは遡ること、3日前の夜――。