「……空くんに、会ってくる」



そう言って、ゆっくりと立ち上がる。

それに陽向くんは驚かずに、ただ明るく笑って。



「行ってこい、ななみん!んで、花火大会に皆で行って、片想い終わらせんぞ!」


「……頑張る!」



笑った陽向くんは、太陽のよう。

向けられた笑顔は、どこかまぶしくて。

真っ黒だった心の中に生まれた、温かい……橙色の気持ち。


閉まったドアに手をかけて開けば、ギィィィッと大きな音がして。


集まった視線を気にせず、空くんを探す。

でも、そこに空くんの姿はなくて。

代わりに見つけたのは……あたしを見て、驚く葉月の隣にいた、茉莉花ちゃん。



「………っ」



一瞬足がすくむ。

ドキッと緊張の音が走って。


……逃げるな、あたし……!


ギュッと手を握り締める。

顔は上へと上げて。



「……よしっ」



あたしは小さく呟くと、タッと駆け出した。