「七海は……まだ、伝えられてないんでしょ?」


「…………」


「だから……何回逃げてもいいから、一緒に頑張ろ?」



葉月は微笑みながらそう言うと、「ね?」と小首を傾げる。

あたしはそれを見て、手帳を握る力が強くなった。


……そうだよ。

葉月は陽向くんの気持ちを知らないから、片想いで頑張ってるんだ……。

なのにあたしの応援までしてくれて……。


……これで頑張らなくて、どうするの。



あたしは顔を上げて、葉月を見つめ返して。


小さく頷きながら、久しぶりに、微かに、笑った。