「あたしの好きな人は……優しくて、面倒見のいい人だよ」



ポツリと呟くように言う。


空くんは意地悪だけど、優しくて。

面倒くさいなんて言いながらも、見捨てなくて。


だからこそ……茉莉花ちゃんにつきっきりでもあるけれど。


そんな空くんが好きで。



「お兄ちゃん、髪留めありがと。大事にするね」



そう言って触れた髪留め。

ニコッと笑えば、お兄ちゃんは優しく笑って。



「よしっ。じゃあ家に帰って、またアレンジの練習、しよっか?」


「うんっ」



ポンッとなでられた頭。

それだけで気持ちも少し軽くなって。

黒色が続いていた日記。

それは久しぶりに、藍色へと変わった。