「七海、それ、欲しいの?」


「えっ、あ……そういうわけじゃ……」



あたしは慌てて首を横に振れば、髪留めを棚に戻す。


本当は欲しいけど、今、お金持ってないし……。

さすがに、これ以上お兄ちゃんに迷惑もかけられないしね。


そう思いながらも、思わずチラチラと見てしまう髪留め。

するとお兄ちゃんはクスッと笑って。



「遠慮しなくていいのに……。買ってあげるよ」


「えっ、でも……」


「可愛い妹のためですから。それに、俺も買いたいのあったしね」



お兄ちゃんはそう言うと、あたしの“待った”も聞かずにレジへと行って。



「はい、どーぞ」


「あ、ありがとう……」



会計をすませると、ポンッとあたしの手に、可愛い袋を置いた。

カサッと取り出した髪留めは、暗い夜道でも、月明かりだけでキラキラと輝いて。