「……あ、でも」




不意に、思い出したようにそう呟けば、フッと笑ってあたしを見る空くん。

今度はそれに、あたしが首を傾げれば、空くんはスッとあたしの髪に触れて。



「七海はそのままがいいけど、これは……似合ってるから」


「えっ……ほ、ホント!?」


「ん。でも頭なでたら崩れるのは困るから、遊んだときと同じくらいに、もうちょい頑丈にしてきて。俺の楽しみがひとつ減る」



空くんはそう言うと、ガタッと立ち上がる。

そして上に大きく腕を伸ばすと、あたしの方を見て。



「七海、喉渇いたしジュース買いに行くけど、来る?」


「えっ、あ……い、行く!行きます!!」



慌てて立ち上がれば、空くんは、ははっと笑って歩き出す。

あたしはそんな空くんの背中を、胸を押さえながらジッと見つめて。


空くん、この前と同じ髪型って、気づいてくれた……。

どうしよう、すっごい嬉しい……!!


嬉しさからドキドキと高鳴る胸に、ポッと赤く染まる頬。

さっきまでのショックなんて、気にならないくらい、口元はふにゃっと緩んで。


“明日も頑張ろう”


なんて思いながら、先を歩く空くんの背中を追いかけた。