急に聞こえた茶化すような声に、バッと顔を上げる。

見上げた視線の先には、ニヤニヤとしながらあたしたちを見る風見先生がいて。



「静かにしてください!!陽向くんに見られたら、大変なことに……!!」


「へいへい、わかってるって。ほらよ」



あたしが「しーっ!」と口元に人差し指をあてながら言えば、風見先生は呆れたように笑うと、パサッと葉月の頭にタオルをかける。

すると、泣いていた葉月の涙がピタッと止まった。



「……これ」


「瀬戸が大事に使ってるタオル。今日はまだ未使用だけど。昔、天宮があげたんだろ?勝手に借りてきたけど、それでも被って、顔、隠しとけ」


「陽向が……?」



葉月は驚いたように呟くと、懐かしそうにタオルを見つめる。

その瞳は、どこか嬉しそうで。