「あっ、葉月!それにななみん!!」



体育館に入った瞬間、聞こえてきたそんな声。

それに顔を上げれば、休憩中なのか、首にタオルをかけた陽向くんが汗だくのまま駆け寄ってきて。



「ななみんに手伝いにきてもらってるって……。葉月、大丈夫かよ?なんかあった?」



葉月の悩みを知るはずもない陽向くんは、心配そうにそう言うと、ジッと葉月を見つめる。

すると、それまで反応のなかった葉月がビクッと体を揺らしたかと思うと、かぁっと頬を赤く染めて。



「な、なんでもないから!ほらっ、陽向は練習に戻る!」


「でも、葉月……っ」



葉月は早口で話すと、俯いたまま、陽向くんの背中を押す。

そんな葉月に陽向くんは、また心配そうな顔を向けて。



「おい陽向。次、試合だから!」



“どうしよう”なんて思いながら、オロオロと二人を見ていれば、

息切れしながらズカズカと近づいてきた空くんが、ガッと陽向くんの首根っこをつかんだ。