「葉月……それは……」



そう口を開いたと同時に、あたしの言葉を遮るように、ガラッと開いたドア。

それに視線を向ければ、空くんが面倒くさそうに、あたしたちを見ていた。



「……空くん」


「葉月、部活だって。陽向が探してた」


「あ……わ、わかった。今、行く!」



葉月はハッとすると慌ててカバンを持って出て行こうとする。

そんな葉月に、あたしは咄嗟に自分のカバンをあけると、中から昼食用にと買っていたパンを取り出した。



「葉月、昼ごはん!食べてないでしょ!」


「え?あっ……ありがと!!」



声をかけてそのパンを投げれば、うまくキャッチする葉月。

そして葉月は、さっきまでの空気を取り払うかのように笑うと、「行ってきます」と言いながら、廊下を走っていった。