「これ乗ろ!観覧車!」



そう言って葉月が指差したものは、この遊園地で、一番人気の巨大な観覧車。

パンフレットを見ると、距離もそこまでなくて、今の状態のあたし達には、最も適切と思われるものだった。


真っ昼間から、観覧車…。

こういうのって、普通、夜のラストに乗るものじゃ?

でも……うん。

たしかにゆったりしたやつだ……。



「あたしはいいよ。ここから近いしね」


「俺も。さすがに絶叫は、まだムリだし」



あたしと空くんが頷けば、「じゃ、行こっか」と葉月が立ち上がる。

それに続いて、あたしと空くんも立ち上がれば、陽向くんだけ、未だに固まったまま動かなくて。



「どうしたの?陽向くん」


「……いや、なんでもない、です……」



顔を覗き込めば、それを避けるようにして、立ち上がる陽向くん。

それに首を傾げながらも、パッと明るく笑って「行こ行こ!」と歩き出した陽向くんに、あたしも特に気にせず、皆で乗り場へと向かった。