――――・・・紙吹雪が風に舞う。

道沿いに民がい並んでいる。



「王妃さまーー!!」

「魔王様ーーー」



そこかしこから声がかかるので、手を振ると、幼い子たちが飛び上がって喜んでくれた。

道には、ビリーたち一家も並んで手を振っていた。

モリーの腕の中で、あの時生まれた女の子がすやすやと眠っている。

爺様も涙を浮かべながら嬉しげに笑っていた。

クルフ一家もその隣でぶんぶんと大きく手を振っていた。


ユリアナはなるべく一人一人の顔を見る。

民の顔を一人でも多く覚えたいと思っていた。



「あ、ユリアナ様、ジークさん達だよ」



リリィに言われてそちらのほうをみれば、ジークがフレアさんと一緒ににこにこと笑って手を振ってくれていた。

その横にはザキがめんどくさげに立っている。



「あーあ、ザキったら、今日くらい嬉しそうな顔作ってもいいのに」



リリィがぼそりと言うものだから可笑しくて、ふふっと笑い声を漏らしてしまった。

ラヴルがそれに気付いて「どうした、何が可笑しい?」と聞いてきた。



「懐かしい顔が沢山見られて嬉しいのです」


「そうか、ユリアナの思うときに会いに行けばいいぞ。あぁ・・だが、しょっちゅうでは困るぞ――――」


「えぇ、ありがとうございます」



複雑な表情のラヴルにニッコリと微笑みを返す。

そう。表向きには、行かないわ―――



―――ティアラの部屋を思い浮かべる。


平らかなドアの向こう。

あの日、セラヴィと一緒に掃除した部屋は、今も綺麗に保たれている。


憮然とした表情の、彼が今も箒を持って佇んでるような気がする。


皆に会いたくなったら、あそこへ行こう。


あの、何もないティアラの部屋に。


そして、緑の門を潜るのだ

魔王様に、内緒で――――





『完』