布の向こうからジークの声とご婦人方の励ます声が聞こえてくる。



「あぁ・・モリー・・頑張れぇ・・頑張れぇ・・・」



ビリーは気が気じゃなく、うろうろと布の周りを行ったり来たりする。

手伝いに参加した殿方たちも固唾をのんで見守る。




・・・ゴゴゴゴゴゴ・・・




地鳴りが轟いて大地が揺れる。

が、誰も気にしない。誰も逃げようとしない。

苦しげに呻く声が聞こえなくなった。


広場は、しんと静まり返る。




――――ほ・・ほわぁー・・ほわぁー―――



「おーい、ビリー!生まれたぞ!喜べ、女の子だ!母親に似て、可愛いぞ」




「・・女の子・・・」



立ちつくし呆けたように呟く。


・・・生まれたんかぁ?・・・



わぁぁっと歓声が上がる。

背中がバシバシと叩かれる。



「やったなぁ!アンタ。良かったなぁ」



見ず知らず男性にガシっと肩が抱かれて頭をわしゃわしゃと撫でられる。

もみくちゃにされて、やっとこ、喜びが体の内から湧きあがってきた。



「女の子・・・女の子だぁ!・・モリー!ありがとよぉ!」



出てきたジークにも飛びついて行って、礼を言って握手をした。



「もう、会えるぞ。モリーは暫くの間安静にしてるように。こんな中難しいが・・・ビリー、お前が、しっかり守るんだ」

「ありがとう・・・何てお礼を言ったらいいかわかんねぇぜ。ご婦人方も・・・ありがとよぉ・・」

「ちょっと、泣くんじゃないよ!しっかりおし!さぁ、赤ちゃんとご対面だよ――――」



布が取り払われて、モリーと小さな赤ちゃんが目に入る。



「ビリー・・・どう?」



薔薇色に染まった肌。豆のような小さな指。

ぷっくりとした唇に頬。

すやすやと眠る姿はなんともいとしくて―――



「どぉも何もねぇぜ・・・モリー・・・あぁなんてかわいいんだぁ・・・俺、これからも頑張るぜ」



ビリーがモリーをそっと腕の中に入れたその時に。


城の方から目映いほどの光が放たれ上空に広がり、薄墨色の雲を押し退けていった。



久しぶりのあたたかな日の光が、広場に差し込んだ。


まるで、祝福するように――――