ジークが声をかけたご婦人が「私ですの?」と自らを指差した。

そうだ、と頷けば「何ですの?」と言いながら近付いてきた。


「あなたに頼みがある。お湯をなんとか工面してくれないか。お産に使うんだ」

「まぁ!お産ですって!?それは大変ですわ。お湯に、布に、暖かい場所が要るわ」

「そうだ、流石良くお分かりだ。頼めるか?」

「任せて頂戴!これでも、何人も子供を育てたんですのよ。ちょっとそこの殿方たち、呆けてないで手伝って頂戴」


ご婦人は胸を張って頷くと、今までいた場所に戻って座り込んでる殿方たちをたきつけた。


「何だ?何をすればいいんだ?」

「木切れを集めて火をおこすのよ。それから、囲めるほどの大きな布を探して来て頂戴。さぁ早く動いて!お産は待ってくれないわよ!」



度度小刻みに揺れる大地もなんのその。

ご婦人は同じ年頃の女性を探しだし、あれこれと指示をし始めた。



「うむ、頼もしい。やはり女性は強いな・・・―――っと、俺は医者のジークだ」

「・・・俺は、ビリーってんだ」

「うむ、ビリー。妊婦さんを、ここに連れて来てくれないか」

「あぁ、すぐに、連れてくるぜ!」




ビリーがモリーのところに戻り、荷車ごとそろそろと戻ってくれば、火が焚かれたところに大鍋がかけられて湯が沸かされようとしてるところだった。


「荷車か・・・そのまま使えそうだな」


布の束を抱えた男性達が向こうから歩いてくるのが見え、荷車の周りを囲むように指示をした。

苦しそうに息を吐くモリー。

ジークが診察をして時間を計れば、陣痛の間隔は短くかなりの進行ぶりだった。


「これは、もうすぐだぞ。ご婦人方で手伝えるお方はおられるかな?」



布の間から顔を出して声を掛ければ、次々と声が上がる。



「イタタタ・・・イタイ!・・・んーーーうーーー」



モリーの苦しげな声が広場の中に響く。



「あぁ・・もう駄目・・・いたい・・・助けて」

「しっかりしろ、母親になるんだろう。ほら、もう少しだ、もう少しだぞ。今だ、力入れて――――いいぞ」

「モリーさん、頑張って!」

「頑張るのよ!」