―――場所は外。

祝賀の高揚感に溢れる広場。

輪を描いたその中心で、ダンスを披露する踊り子達にやんやの喝采が浴びせられる。

笑顔で挨拶をして輪の中に戻る綺麗な踊り子達。

楽しげな雰囲気を一転させることが起こったのは、この時だった。



―――ズズズズ・・ズ・・・ン―――



大きな揺れが、ケルンの街を襲う。

広場に集まっていたヒト達は、突然の揺れに何が起こったのか分からず暫く呆然とするものの「きゃぁぁぁぁっ!」一人の女性の叫び声に我にかえって騒然とし始めた。

とりあえずどこかに逃げようとするが、大きな揺れに足を取られて満足に動くことが出来ない。


「危ないぞ!」

「皆座れ!」

「動くな!」


冷静なヒトの叫び声が広場に響く。

轟音を伴って大きく揺れる大地に、皆素直にその場に座り込む。

見知らぬ者同士支え合い、庇い合う。

ビリーたちも同様に座り込み、赤ちゃんを抱えるクルフの妻を気遣い励ましながら支えていた。



・・カラン・・・ガラガラガラ・・・ドォォォ・・・ン・・



いろんな音が耳に届いてくる。

あまりの恐ろしさに身が竦む。

懸命に体を固く小さくして恐怖の時をやり過ごすが、背中にパラパラと物が当たるのを感じる。



「一体、何が起こってるんだぁ・・・おい!クルフ。大丈夫かぁ!?」


大きな揺れがおさまり顔を上げれば、クルフの額から血が一筋流れ落ちていた。


「あぁ、大丈夫だ・・・ちょいと、頭に木の破片が当たっただけだ・・・おい、大丈夫か?」


クルフの後半の言葉は赤子を抱く妻に向けられていた。


「えぇ、私は平気よ。この子も」


腕の中では赤ちゃんがすやすやと眠ってる。


「破片て・・お前・・これ!これで抑えてろ!」


ごそごそとポケットから布を取り出してクルフの頭に押し付けて急いで立ち上がった。


「医者様!今、ここに医者様はいねぇか!?」


返事はねぇかと周りを見渡せば、木の破片や石までもがあちこちに落ちていて結構な数の負傷者がいるのが目に入る。

・・・こりゃぁ酷い・・・。



「ねぇ、ビリー。私たちはいいわ、自分達で何とかするもの。それより貴方は、モリーのところに行くべきよ。彼女は、身重だわ。それに、爺様も・・・」



年老いた爺様とお腹を摩るモリーの姿が思い浮かぶ。

もしも、物が体の上に落ちていたらと考えたら、ざぁぁ・・と血の気が引いていく。

そうだ!こうしちゃおられねぇ、俺は戻らなきゃ!


「すまねぇ、ありがとよ!」


クルフ達に礼を言って踵を返し、ヒトを掻き分けて急いで進む。

向かい側から走って来るヒトとぶつかり「すまねぇ」「通してくれよ」謝りながらもビリーは走りに走った。

息を切らしながら心の中で叫ぶ。


モリー、頼むから、無事でいてくれよぉ!!