「―――今少しだと言うに。・・・む、貴女は私から離れていろ」

「え、何を―――」


問いかけは宙に浮く。

ふわりと浮いた体が隅まで運ばれ、ゆっくり下ろされたのと同時にセラヴィが宙に浮かび光の矢を放つのが見えた。

今までいた場所に幾つもの光矢が当たってぶすぶすと焼け焦げる。

いつの間にか会場の中は空っぽになっていて、ばらばらと走り寄って来た覆面を被ったヒト達がセラヴィの周りを取り囲み次々に光りの矢を放った。

セラヴィはそれを軽くかわしながら反撃をする。

それは、庭を焼き払った時よりも格段に弱く、ヒトに当たらないよう加減してるように見える。



「・・・この期を狙っていたか。上等だ」

「この期を逃せば、貴方様は仕留められません。どうか、お覚悟を!」


「やめて!!」


多勢に無勢。

いくらセラヴィが強いとはいえ、病気なのだ。

それに、さっきのワイン。あれには何か良くないものが入ってるようだった。


止めて。

お願い、止めて。


どんなに叫んでも、攻撃は止まない。



「お願い・・・やめて・・・」


闘うセラヴィの姿が霞む。

ヒトが目の前で死ぬのは、もう嫌。

嫌なの。


とても見ていられなくてへなへなと崩れ落ちて顔を覆う。

すると、爆音の合間に聞き覚えのある囀りと羽音が微かに聞こえてきた。

目を上げればヒインコがパタパタと旋廻するように飛んでいる。


「あなた・・来てくれたの?」


今、こんなに危なくて怖い状況なのに。

私を、探してくれたの?


紅い綺麗な羽が所々焦げたりして汚れている。

きっと、光の矢の影響を受けたんだわ。

震える手を差し出せば、ふわりととまった。

元気に囀りつづけるその姿に、勇気を貰う。



―――そうよ、婚儀はまだ終わってないけれど、私は次期王妃。

しっかりしなくちゃ。

こんなことに負けてはいれらないわ。

私が。私があの直中に行けば、あの敵の方達も少し怯む筈―――



敵が紳士であることを祈りつつ、意を決して立ち上がる。


「あなたは、離れていてね」


ヒインコを放して、大声を出すべく息を吸い込んだ。


「止めなさい!!」


叫びながら足に勢いを込めて一歩踏み出そうとしたら、面前に何かが出現して鼻がぶつかった。


「一体誰が・・・」


痛む鼻を押さえながら見上げて映ったその懐かしい顔に、視界が滲む。

貴方は・・・・。



「全く、何をなさるつもりですか。貴女様も困った方ですね」


「アリ・・・体はもういいの?」


「おかげ様で、この通りです」



言いながら沈み込んだアリは、軽々と私を抱え上げた。

・・・嫌な予感がする。



「待って。私は彼らを止めないと――――」