宝石箱を戻して、ため息をつく。

短い時の間に、いろいろありすぎた。

ティアラの話と、セラヴィのこと。



「外は、やっぱり寒いのね・・・」



外気温との差を物語る、白く曇った部屋の窓。


“窓を開けてはいけません”

“貴女様は大事な御体なのです。障りが出れば大変なことになります”


恐ろしい程に寒いのです!絶対にいけません!と、今朝は、侍女にも使用人にもきつく注意されいた。

恐ろしいって、一体どれ程なのか。

部屋の中はあたたかいのに、冷気が浸入することもありますからと、妙に厚着をさせられていて少し動きづらい。

さっきからずっと、囀りながら窓際をちょんちょんと歩いてるこのコを、外に出してあげたいけれど、現状何ともならない。

ほんの少しなら構わないわよね?きっとバレない筈だわ、なんて考えて、こっそりと隙間程度に開けようと試みてみた。

けれど、何故だかどうにもびくとも動かなかったのだ、この窓は。



「鍵は動くのに・・・」



これはやっぱり、セラヴィが開けられないようにしてるに違いない。

こんなことも制限されてしまうなんて、この先を考えると少しうんざりする。


「ごめんね。窓は開けられないわ。あなたは、しばらく外に出られないわね。でも・・・外は、すごーく寒いらしいわよ?出られなくて正解かもしれないわ」



そう言えば、小さな頭をふるふると横に振った。

こちらを見つめるつぶらな瞳が悲しげにうるうると潤む。



「そんなに、外に出たいの?」



胸の辺りがきゅっと締め付けられて、どうにもなんとかしてあげたくなる。

けど。

・・・う~ん・・・困ったわね。

どうしようかしら、窓は壊せないし。

それに、怖ろしいほどに寒いらしいから・・・・・・・。

そうだわ!



ぴん、とひらめいた。

あそこなら大丈夫かもしれない、ティアラが守る穏やかな空気、創始の森。

ここよりも少しは暖かいかもしれないわ。

門まで行ってみて大丈夫そうなら、森に放してあげよう。



あなたは自由な羽を持つ鳥さんだもの、こんなところに閉じ込めていてはいけないわね。

翼が死んでしまうわ・・・。

会えなくなるのは、とても、寂しいけど―――


「―――あとで、一緒にティアラの部屋に行ってみましょう」


だから。

もう少し、一緒にいましょう。ね?

目線を合わせて、指で頭を撫でてあげると目をつむって大人しくなった。