“待っていろ”



約束通り迎えに来てくれたのね?



―――良かった、あれはやっぱり夢だったんだわ。

あんな怖ろしいこと、あるはずがないもの。

貴方を信じてて良かった。

待ってて良かった―――




幸せな気持ちになって目の前の胸にそっと手を置く。


―――あたたかい―――


ずっと待ち望んでいたぬくもり。

規則正しい胸の動き。

きっとまだ起きてないわね。

私も、頭がぼんやりしてて何だか重いの。

もう少し、一緒に眠っててもいい?



「ラヴル・・・?」





「・・・今より、その名は二度と呼ばせん。もう、忘れよ」





重低音の囁きが鼓膜を擽り、全身を駆け巡る甘く痺れる感覚とともに一気に目覚める。


これはラヴルじゃないわ。


「――――っ、誰!?」


毛布がすっぽりと被され、狭い視界に映るのは厚い胸板と肩から零れる黒髪だけ。

跳ね起きようにも指先一つ動かせず、全身が固まったかのよう。


この状態は――――


毛布に包まれたままの体が、ずりずりと抱き寄せられる。




「漸く、だ・・・漸く我が元に来た・・・」



体の動きを縛られ、毛布をすっぽりと被されたまま仰向けにされる。

ギシリ・・と体の両脇が沈み込む気配がして心臓が跳ね上がる。

どう考えても、この状態は・・・。



「んーーっ・・んーーー!」



叫ぼうにも、唇まで固まっていて声が出ない。



―――嫌、お願い。

誰か・・・っ、ラヴル―――