慌てて口をついて出た言葉で、ラヴルがおかしそうに声を殺して笑っている。


「やはりユリアは面白いな―――いいから、黙って従え」



どんどん近付いてくるのは、大きな大きなベッド。

人が10人くらい寝られるんじゃないかしら・・・。

よく見ると、シーツの上にはピンク色と赤色の花と花弁が惜しげもなく散りばめられている。

何故か真ん中のあたりだけ、花が乗っていない。

それが、何を意味しているのか考えるまでもない。

その、真ん中のぽっかり空いた場所にゆっくりとそぅっと下ろされた。



「コレはリリィが飾り付けたそうだ。ユリアが喜ぶと・・・。一生懸命飾ったそうだ―――どうだ?気に入ったか?」


―――リリィって、あのかわいい女の子・・・。


さっき見た、ニッコリと可愛い笑顔を向けるリリィの顔が思い浮かぶ。



「これを、リリィが・・・?えぇ、とても素敵で綺麗だわ―――って、ちがっ―――あの・・・待って、ラヴル」


「駄目だ。待てない」



手脚をバタつかせて最後の抵抗を試みるも、何故か手が自然に動いてゆき、顔の両側に沈められていく。

脚や体は動かせるものの、どうやったのか、両手首がベッドに縫いとめられたように封じられ、起き上がることも寝返りを打つことも出来ない。

無抵抗となったユリアの上に、覆い被さる様にラヴルの体が乗った。

いつの間に脱いだのか、ラヴルの上半身はすでに何も身に纏っていない。


目の前で黒い髪がサラリと揺れた。

不安げに見上げるユリアの黒い瞳を、漆黒の瞳が妖艶な光を湛えて見下ろし、掌が紅潮した頬をそっと撫でた。



「怖いか・・・緊張してるのか?ユリアのこんな顔もいいな」


「っ・・・そんな・・・ちっとも良くありません」


「震えているな・・・」


「ラヴル、あの・・緊張っていうか、まだ心の準備が・・・あの、私―――」



声が震えてしまう・・・。何とか思いとどまって欲しい。

そう願いながらラヴルをじっと見つめた。

確かにオークションで売られたけど、確かにラヴルのモノかもしれないけど、まさか、こんなことになるなんて。

せめてもう少し、待って欲しい・・・。


そんな願いを見事に無視し、ラヴルの指が夜着の襟元にスッと添えられた。