月明かりの差し込む中、ベッドの上に横たわる柔らかな肢体。

その上からゆっくり体を離したラヴルは、毛布を丁寧に掛けて包み込み、薔薇色に染まった頬をそっと撫でた。

指先で唇を辿り、柔らかなストレートの黒髪を梳く。



―――コンコン・・・


『ラヴル様?・・・そろそろ、宜しいかしら?』


遠慮がちにもはっきりと問いかけてくるのは、シレーヌの声。

計ったようなタイミングの良さに何もかも見通されてるようで、正直むっとしながらも返事を返す。

全く、このレディには敵わない。



「―――入れ」

「失礼致します」


静かにドアを開けて入ってきたシレーヌの手には、真新しいドレスが下げられている。


「まぁ、可愛らしいこと。眠ってしまわれたのですね?」


くすっと笑んで、鳶色の瞳を細めた。

真紅のマニキュアを塗った美しい指が、黒髪をさらりと零した。


「綺麗な髪ね・・・」

「頼むから、起こしてくれるな。機嫌を損ねてしまう」


柔らかな体を離してシーツを巻いて静かにベッドから下りる。

自らが脱ぎ散らした服を手元に拾い集める。

見事にあちこちに散っていて、その余裕のなさに苦笑が漏れた。


―――この私が・・・―――


「随分難しいことを仰るのね」

「貴女ならそれくらい簡単だろう?シレーヌ」

「簡単なことのように仰るけれど―――これでも、似たようなドレスを用意するのも大変でしたのよ?・・・ご褒美は、ないのかしら?」



色香を含んだ鳶色の瞳で見上げながら、首に腕を回すシレーヌ。



「ねぇ・・・久しぶりに・・どう?あんな小娘とは違う味を楽しませて差し上げるわ――――それとも、もう体力は尽きたのかしら?」



美しい指が滑らかな頬を撫でおろして胸へと下りていく。

じっと見上げてくる瞳は、実に男心をそそる熱を放っていて、目が離せない。

艶を帯びた紅い唇が首に触れて、耳に息を吹きかける。

指先は着かけていたシャツに手をかけた。



「シレーヌ・・・体力がないなど、随分なことを言ってくれる・・・」


指を振り払い、しなやかにも柔らかい体を抱き上げてソファへと運ぶ。

首に巻き付いたままの腕がぐいっと引き寄せるので、覆い被さるような形でソファの上に手をついた。


妖艶に見上げる瞳。

それと同色の鳶色の髪、魅惑的な唇。

豊満な体つき。


相変わらず、魅力的だ――――――