―――良い夢を・・・本当にそうなればいいけれど――――

パメラが下がり独りきりになる。

薄暗い部屋の中で金の天蓋を見つめ、いつものように心の中で呟く。


“おやすみなさい、ラヴル”


毎晩慣例の儀式のようにしているそれに、強い想いが乗せられるようになったのはこの城に来てからのこと。



・・・夢でもいいの。


貴方に会えるならば。


それで私はきっと、明日も頑張れるから・・・



―――――――・・・



『・・・ユリア・・・ユリア』



微睡みの中で呼び声が聞こえる。

聞き取り難く小さかったそれが、時が経つにつれて徐々にはっきりとし出す。




―――その名前を呼ぶのは誰?・・違うの。

私、本当はその名前じゃないの。

私は・・・私の名前は―――



『ユリア、無理をするな』




懐かしいこの声の色。

ぞくぞくするような低い響き。


・・・似てるわ。


ずっと、ずっと、聞きたいと焦がれていたものに。


でもまさか、信じられない。





『・・ユリア』




幻聴だろうと思う耳に、再度声が届けられる。

それはすぐ傍から発せられたようにはっきりとしていて―――



―――ラヴルなの?

どうして傍にいるの?





『相変わらず、ユリアは面白いな。貴女が呼んだんだろう?でないと、いくら私でもこんな場所には来れん』




さも当然のことのように答え、クスクスと笑う声が聞こえる。

漆黒の瞳が妖しく悪戯っこく輝くのが脳裏に浮かぶ。