俺様で、強引で、私の気持ちなんて構わなくて。

最後の抵抗を頑張る私を見て、こうして楽しんでる。

それが悔しくて、負けたくないのに。

思い通りになりたくないのに。

そんな風に優しい瞳で囁かれたら、もう観念するしかないじゃない。


ダメだと思うのに。


心の中で危険信号が鳴っているのに。


ドキドキするこの想いが、止められなくなってしまう。


認めたくないのに。


この小さな心の中が貴方だけで一杯になるのがとても怖いのに。


もう、認めるしか、なくなる・・・。


・・・ほんとに、あなたは・・・ずるいわ・・・・。





「・・・お・・おはようございます・・・」

「うむ、おはよう、ユリア。いい子だ―――――怒ったその顔も可愛いが、私は笑った顔が好きだ。・・・ほら、もう機嫌を直せ」




満足げに微笑んだ顔が迫ってくると思ったら、額で小さなリップ音が鳴った。



「今日は、カルティスが来る。ユリアは―――・・・ちっ、ったく・・・」



と言ったきり押し黙り、そのまま、ぴた、と動きを止めた。

大きな手で頭を抱え込まれ、ぎゅっと引き寄せられる。



「あの・・ラヴル・・・?」


「・・・動くな。静かにしてろ。誰かが結界を超えようとしているんだ。・・・・カルティスではないな。これは――――・・・・またか。全く、何の用だ・・・―――――ツバキ」



最後に発した呼び声は、いつものものと全く違った。

びりびりと空気を震わせていて、広範囲に声を伝えている。

その呼び声にすぐさまツバキが来て、ドアを開けた。




「はいっ、ラヴル様、御呼びですか」


「うむ、来客だ。結界の境にいる。いくらケルヴェスといえど、昨夜幾重にも張り直した結界だ。まだ此方には来れまい。先に行って応対してろ。私もすぐに行く。ケルヴェスが来るとロクなことが起こらん。屋敷の中に入れるな」


「はいっ、お任せ下さい!行ってきます!」


腕の中に大切そうに抱えられているユリアを見てにっこりと笑った後、姿勢よく元気よく返事をし、ツバキは矢のように外に駈け出して行った。