むくっと起きたラヴルの体が、上に覆いかぶさってきた。

体を覆っていた毛布が離れ、冷たい空気が素肌をさす。

ころんと仰向けにされ、例のごとく手が絡め取られた。


はだけたバスローブから見える逞しい胸にドキドキしてしまう。

無言のまま見下ろしてくる瞳は相変わらず妖艶で、居た堪れなくて照れ隠しにも、何か言葉を発せずにいられなかった。


「あ・・あの・・ラヴル・・・?」

「ふむ・・・ユリア。それでは、不合格だぞ」

「え・・・・ふごうかく?」

「そうだ。私に言うべき言葉があるはずだぞ」



――言うべき言葉って、何?

というか、不合格だなんて、とても失礼だわ。

からかうような悪戯ぽい色が浮かぶラヴルの瞳に、むかっとしてしまう。

私はいつも、あなたにこんなにドキドキしてるのに。

あなたはいつも余裕たっぷりで。

それも、なんか、悔しい――



「何のことですか。というか、手を離して下さい」



せめて絡めてる手を離して欲しい。

無防備なこの状態から脱したい。

手を動かそうと無駄な抵抗をしてみても、やっぱりビクともしない。

ありったけの怒りを瞳に乗せて、睨みつけてみる。

それでも平気そうに笑みを浮かべて、さわりと頬に触れてくる。

絡められていた指が離れたのに、この手は、ベッドに縫いとめられたように全く動かすことが出来ない。



・・・ずるいわ・・・。




「ユリア、何を言っている。常識だぞ?そんなことでは、とても離すことはできんな」


クスクス笑いながら、見つめてくる漆黒の瞳は色気を含んでいて、ぞくっとして、また負けそうになる。



・・・ラヴルは、ずるい・・・。



「わからんのか?簡単なことだ。今は、朝だろう・・・」



早く言えとばかりに無言で見つめてくる。

頬にあった手は今は髪に移り、長い指がすくってはこぼしを繰り返している。耳元でさらさらと髪が零れた。



・・・ラヴル、あなたは、とてもずるいわ・・・。



「ユリア、早く言わないと、いつまでもこのままだぞ。いや・・・この手が、別の場所に触れたがるかもしれん。例えば―――」



髪を弄っていた手を目の前でヒラヒラとさせたと思ったら、ゆっくりと下の方におろしていった。その方向は―――



「ちょ・・・っ・・・・あの・・待って」


「ユリア、本当は分かってるのだろう。もう素直になれ」