奏の部屋みたいに広い・・・けど・・・。
 ちゃんと整っている部屋だった。
 本当に引越しなんてするの?というような。
「奏って・・・今日引っ越しちゃうんだよね?」
「うん」
 少し悲しい顔でも笑って答えてくれた。
 奏の部屋に入った。
「あ・・・・」
 物が何もない。
「奏が引っ越したらこの部屋どうするの?」
「さあ・・・。物置にでもしちゃうんじゃないかな」
「え!?」
 こんなに広い部屋を物置に!?
 なんかすごいな・・・。
「・・・奏ー!」
 下から女の人の声がした。
「あ。はーい!」
 奏は負けじと大きな声で返事をした。
「来てー!」
「ごめん、母さんが呼んでる。ちょっと待ってて。・・全く・・・」
 奏はため息をついて部屋から出て行った。
 私は奏の部屋を見渡した。
 本当に何もない・・・。
「・・・ぁれ。」
 奏の匂いがする・・・。
 この匂いはなぜか私を安心させる。