私には1番聞きたかったことがあった。
「何?」
「・・・どうして、私を助けたの?」
 淳平は目を逸らした。
 2人の間に沈黙が続いた。
「人が落ちてくのを見過ごすわけにはいかないじゃん・・・。」
「じゃぁ、どうして私の名前を何度も呼んだの?」
「え・・・?」
 暗闇の声。
 あれは淳平の声だよね?
「聞こえたの。暗闇で何度も何度も私を呼んでいる声。あれは紛れもなく淳平の声だった」
「さあ・・・。呼んでないと思うよ。俺はそこで倒れちゃったんだから」
「そう・・・」
「なんか、ごめんな。」
「なんで謝るのよ。謝るのは私の方。ごめんね。・・・じゃあ、私、時間だから行くね!」
 病室を出ようとした。
 でも腕を掴まれた。
「待ってよ!」
「何・・・?」
「じゃあさ、俺も聞くけど、どこ行くの?」
 なんで淳平がそんなこと聞くのよ・・・。
「え、駅!早く行かないと電車が出ちゃう!」
 それでも淳平は離さない。