「どこに行くの?遠くに行かないよね!?」
 つい叫んでしまった。
 でも電車の音で私の声はあまり響かなかった。
 奏はそれを聞いて俯いた。
「・・・東京。」
「え?」
 東京っていったらこの岩手からすればかなり遠い。
「だから・・・もう会えないかもしれない。」
「嘘・・・。嫌だよ!」
 嫌だなんて言って引越しがなしになるわけない。
 でも行って欲しくなかった。
「ごめん・・・」
「嫌・・・だよぉ!」
 涙が止まらなかった。
 今まで嫌なことがあっても奏が居ればそれを乗り越えられた。
 それなのにもう会えないだなんて・・・。
 悲しすぎた。
 胸が張り裂けそうだ。
「俺だって・・・行きたくないよ・・・!」
 奏は私の隣に来て私を抱きしめた。
 強く、強く、抱きしめた。
 私は奏の胸の中で泣いた。
 奏は私の肩に顔を踞せ、何度も謝った。
 ごめんね、ごめんね、って。
 だんだん奏の声はかすれて聞こえなくなった。