私たちはお互い逆方向に歩いて行った。

 ――日曜日。
 いつもよりおしゃれをしたつもり。
 張り切って家を出た。
「上りで2つ目の駅・・・」
 1人で切符を買って、1人で電車に乗って、1人で目的地に到着。
 ホームに降りると、壁に寄りかかっている奏がいた。
 奏はすぐに私に気付いて駆けてきた。
 すごく笑顔で。
「わざわざありがとう!」
「いいの!いつも来てもらってるし。呼んでくれてありがとう。」
「じゃあ、行くか。」
 私は頷いて歩き出した。
 すると奏は私の手を握った。
 いつもは会うだけで一緒に歩かないから少し緊張した。
「今日の瑞歩・・・。」
 少しの沈黙の中、奏が言った。
「可愛いよ。」
 男子に可愛いなんて言われたことのない私にとって、その言葉が心の中でこだました。