涙を堪えながら、校庭を駆け抜ける。



一刻も早く家に帰りたかった。

こんな現実とさよならしたかった。



帰り道、電車の中で横に座った人が言っていた。



「大神初めて見たんだけどぉ~っ!」


大神という言葉を聞くのは今日で2回目だった。




「鼻筋もスッとしてて~、二重なんだけど切れ長で~、セクシーな唇してて~、輪郭もシュッとしてて~もう本当私見惚れちゃったんだけど。」


「外見も超完璧で喧嘩も強いってやばくな~い?最近も№1だったチーム一人で潰しちゃったらしいし。」


「あぁ~、もう彼女になれないかなぁ~!?」


「無理っしょ~っ!あ、でも、女の子だったら誰でも抱いてくれるってう・わ・さ!」


「ぇ~っ、遊びでも良いから抱いて欲しいっ!」


「わかるぅー!でも何で彼女作らないんだろうね?あんな完璧だったら誰でも選べるのに。」


「う~ん、何か実は誰かずっと想ってる人が居るらしいよ。その子が居るから本命は作らないって。」




その会話を聞いて、私が連想したのはカレ。


だって似すぎてる、変わりすぎたカレ、に。



私は顔を俯けながら家に帰った。