道は、まだそれほど混んではいなかったが、遠くでサイレンの音が聞こえてた。

「………」

 砂糖屋に着いた俺は絶句した。砂糖屋は燃えていた。ボヤという程度だが、明らかに建物が燃えている。

「兄ちゃぁん! こっち、こっち!! こっち着けて!!」

 バックミラーで後ろを見ると、作業着を着たオヤジが手を振っている。俺はとりあえず、オヤジが呼ぶ広場に車を移動させた。

「おっちゃん、あっち、燃えてるやん!」

「事務所の方やしいける。今から一輪車で荷物持ってくるから!」

 町が悲鳴でごった返している時も、全く関係のない仕事に精を出して働いていた人間も、数多くいたはずである。

 さて、どうにかこうにか荷物を運んだ後からが大変だった。次は橋を渡らなければいけないのだが、橋に亀裂が入っており、フェリーに変更しなければならなくなった。更にフェリー乗り場にそこに着くまでに、いつもの4倍以上の時間がかかり、更に港は、信じられないほどの人間と車が押し寄せていた。これでは、いつ乗船できるか分からない。

下ろし期限に間に合わせるのは確実に無理だ。

だが、その無理をどうにかしてほしい、と吹っかけるのが、会社である。

「無理やとは思いますけどね……」

 とりあえず俺は、それだけ電話で伝えると、車内でふて寝することにした。いずれは動くし、動かないうちは、仕方ない。……今のうちに寝ておこう。