それをきいても、彼女の憤懣や絶えず。


「私はねぇ、どうしても行かなければならないくらい、それはもう生命やら家名やら崇高なものに関わる理由がない限り本家には立ち入らない、て決めてるのよ!その意味がわかる!?あんな陰湿で気持ちの悪い性悪どもの住処に行くなんて御免こうむるわっ。本音を言わせてもらうと、お兄様の考えだってわからないわ。いくら勉強がしたいから、て本家に行くなんて…!確かにお兄様にとってはあの家が本当の家なわけだし、私に文句の付けどころ何てないわよ、ええ全くっ!!だけど、だからってどうしていけるのよ?私にはまったく理解不能な考えだわ、ええ本当に!!」


そこまでほとんど息継ぎなしで言い切り、ローズは肩を上下させながら大きく息を吸ってはいた。
あまりの剣幕に、グラースは言葉も出ない。


「大体、お父様の気も知れたもんじゃないわ。二日間、四六時中べったりとくっついてテストをした娘に、休む間もなくこの仕打ちよ…っ。貴方、明らかに向こうが悪いのくらいわかるわよね!?」


ローズは言いながら、昨日・一昨日の二日間の記憶を思い起こす。
彼女の父親は一族一の金持ちのくせして金遣いにうるさいうえに、自分の娘の教育は自らの手で行う主義だ。言うまでもなく本人が早々暇な人ではないので、たいていは彼女の兄・ブルーが見ている。
しかし、そのブルーが自分の勉学のために本家に戻っているこの数日間をいいことに、ローズの父は嬉々としてこれまでの学習効果を試すテストを行った。
二日間、ろくな休みもとらず、政治・経済・数学・国学・自然学・芸術学・マナー等々――テスト三昧。
その最後に総仕上げとばかりにローズに言い渡したのが、本家への顔出しだった。