「まあまあローズ、落ち着いて。愛してるから」


「何が愛してるよっ。いらないわ、結構よ!もとはといえば、お父様が本家にお兄様の迎えに行かないのが原因なのよっ。少しは反省の色を見せたらどうなの!?」


ローズは声高にどなりたてれば、耳に届くのは楽しげな笑い声。


ローズが思わずペンを折ろうとしたら、後ろからグラースが慌てて静止をかけた。



「堪えてください、ローズ様っ。いつものことなんですからっ」


「だから腹立つのよ、バカグラースっ」


「はは、楽しそうでいいなあグラース。ローズもかわいいなあ」


なんて声がきこえて、ローズとグラースは暴れるのも疲れてバカらしくなり、ため息をついた。


それからローズはペンをまた耳にあて、





「で、何で私を本家へ?」





と、低くすごみのある声で問いかけた。


とはいっても、真面目な返事など期待してはいなかった。

父はちゃらんぽらんで、人には到底理解できないような複雑怪奇な思考回路を有しているのは、生まれてきてからの十数年間で嫌というほど味あわされている。

そんな父が、娘の怒り心頭に心打たれて真面目に返事をくれるなど、ありえない。


だから、ほとんど怒り任せ、少しだけあきれるままに、投げかけた問だった。