(苦しい、悔しい――)


ローズは胸の内にあふれる激しい感情に泣きそうになりながら、部屋までの廊下を素早くかけた。


部屋に入れば、ベッドを整えていたグラースが驚いた様子でこちらを振り替えった。



「ロ、ローズ様??」


「なによ、グラース!私は今最高潮に腹が立ってるのよっ。余計なこと言って反省させるつもりなら引っ込んでなさい!さもないと髪の毛引っこ抜くわよ!!」


文字通り八つ当たりされ、怒りの矛先を向けられたグラースは、一瞬呆気にとられたものの、すぐに気を取り直してローズに歩み寄った。


「ええと――、そんなつもりはございませんので、ご安心を。ローズ様、もうお食事はお済ですか?もう、休まれますか?」


「ええ、食事なんてつまらないものはとっととおしまいにしたわっ。ああもう、せっかくだし、私もお兄様みたいに読書でもしようかしら!?」


「いえあの、お嬢様。読書はそんな怒り任せにするものではありませんから」


言いながら部屋の奥へと音を立てて歩いていくローズを、グラースはあわててついていく。


「ああ、そんなことより、お父様に電話だわ。いい加減私の広い心も限界よ!とにかく私の怒りを受け止めていただきたいわ、ええ全く!!」


そのまま部屋の奥にある鞄に目を止めるや否や、ローズはそこにとびかかるように移動した。


その中に、グラースが家から持ってきた荷物やさまざまな道具が入っているのはわかっていた。
荷物の中に、父と連絡を取るための手段が何かあるだろう。


ローズはそう踏んで、荷物を片っ端から部屋中にばらまいた。